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極めて哲学的な歯の童話

鎌倉だより4

  さて今日は哲学的童話のお話です。昔々の。。。。でなく今でさえ人体は一本の管です。口からお尻の穴までの。そして人体は摂食つまり飲食したものだけで出来上がっていることは皆様ご承知のとおりです。歯以外の全身の細胞には新陳代謝というものがありましておよそ五年で歯以外の全身の細胞は全とっかえとなります。ということは五年前のあなたと今日のあなたは実は別人というわかにもなるわけです。歯だけを残して(!)さてさて今日申し上げたいことはその白い歯だけになった透明人間に関してではありません。歯がそしてお口が口唇を形づくる口輪筋が、舌が、何をどうして管であるべき人体とどう係わり、どう役に立っているかについての有意義なお話です。今日は特に口と口輪筋に絞って話してみましょう。

  健康な私達は毎日点滴などで栄養を補給しているのではなく、ましてや目や耳や鼻からでもありません。すべて経口的に口で捕食し歯で噛み砕き舌と一緒に唾液と混ぜ合わせて嚥下し体内に取り込むという一連の働きで栄養を取っています。何万年もの人類の歴史でお医者や歯医者がその当初から存在したはずはありません。何故ってその頃歯科大学はありませんでしたからっていうのは冗談として、出土した頭骨が当時は歯科医の仕事があまり必要なかったことを証明しております。本当の太古においては歯ブラシすら売っていなかったでしょうから、なあんにもしなくとも懸命に食物をさがして、命がけで食べていてそれだけで何とか命をつないでいてむし歯もできず、ダメになったら死んでいたという人生であったのでしょう。

  このひたむきさ、一生懸命さこそが人間の健全さの鍵であるような気が今となってはいたします。「タリー」から「ムカツいてすぐキレるおバカさん」の背後の病んでいる現代文明の話は今日のところはひとまずおいて。ですからここで強調したいのは歯を磨かなくとも何もせずともあまりむし歯になったり困ったりしないという食生活が人間の本来の姿だろうという点です。そういた意味で新陳代謝のない、であるからこそ自然治癒能力のない歯が人体という管の入り口に鎮座ましますことは非常に哲学的な示唆に富んでいることとおもいます。歯の悪かった食物が歯にだけ選択的に悪く働きそのあと管を無害に素通りするはずはないのですから。その悪い食物で首から下の身体全体が出来てしまうのです.いや忘れましたが頭や脳だって管の一部でした。そのことをよーく認識すれば我々は自分の食のありかたにもっと慎重にならざるを得ないと思われます。

  では何をどう食べればよいのでしょう.そのヒントは歯列にあります。肉だけを食べるライオンやトラは全部いわば犬歯のようなもの。草食性のウマやウシは草用の切歯とそれをすりつぶしたり穀物用の臼歯のようなものだけを持っております.翻ってヒトはどうでしょう。野菜などを噛み切る切歯が8本、肉用の犬歯が4本、穀物用の臼歯が大小20本(親知らず、つまりそれの生える20歳頃には既に親も死んでいるはずである第三大臼歯4本も入れると)。8対4対20。つまり2対1対5。この人間の雑食性こそが氷河期も超えて、虫でも獣でも草でも木でも土でも(天明の飢饉のときは土も食べたのです!)何か有れば何とか生命をつないでこれたのです。

  この2対1対5をよーく考えてください。毎日三度三度好物だけの片寄った食事ではやはり人間は狂うでしょう「タル」くもなり「キレ」もします。日本人なら一回一合の米(それもなるべく玄米に準じたもの)を一日三回とり、掛ける365が一石。すべて人間の背丈を意識した祖先から受け継いだ知識を再確認するとよいでしょう。だがしかしここでもっと大切な話をしておきます。健康志向の方は特に要注意です。人間は歯や健康のために生きているのでは有りません。身体だけ頑健で精神いやしく頭カラッポの役立たずも大勢いれば歯なんか一本のなくとも立派な人も大勢いらしゃる。要は早めに歯の自然治癒力の無さを知って下さってさえいたらそれなりの対処も出来たのにという点に我々歯科医はまさに歯がゆい思いをしているのです。

  次に口唇を形づくる口輪筋のお話です。我々アジア人はどうも筋肉が弱い。白人や黒人は肩コリがマレで姿勢だってきれい。日本人は大きめの頭が細すぎる首の上にのってどうも無理が有るようです。それを今までは日本式トイレ等の習慣、立振舞や小笠原流や武士僧侶の身のこなしなどの知らず知らずの筋トレが役に立っていたようです。いつから我々日本人はポケーと口を開いてダラシナファッションでカッコ悪くなったのでしょう。姿勢の悪い分、本当に良く似合います。それが遠因として歯列不正や顎関節症を来たします。まずは管を支える背骨が真直ぐになるよう腹筋に代表される筋肉をつけましょう。それだけで内臓の病気や腰痛の予防になるかもしれません。そして管の入口の口輪筋をキュッと閉じ、口角を上げてニッコリしましょう。その時ついでに管の出口のお尻の穴たる肛門括約筋もキュッと締め小股の切れ上がった美人でいましょう。そうすれば、お口だけでなく婦人科の病気やおもらしの危険からも解放されるかもしれません。お尻までまいりましたので今日の話はおしりまいです。おやすみ。